
その設計図で、30年先は守れない。
多くの地域クリニックでは、IT基盤は「今、動けばいい」もの。
電子カルテサーバーは診察室の隅に置かれ、日々の埃をかぶり、物理的セキュリティも十分とは言えない。
それが、業界に根付いた“無意識の当たり前”。
しかし、子どもたちの繊細な個人情報を預かる医療機関として、そして30年先も地域を支える存在として。さらにAI時代の情報量に耐えるために——その常識は、あまりに脆弱だ。
守るために、進化する。
机の下のPCの時代は、終わり。
運用から逆算し、AI連携を前提に。
次の10〜30年を支えるインフラへ。

“偶然”から生まれた、未来への一手。
転機は、設計図に余っていた、わずか“1畳の事務室”でした。
この使い道のない空間を、未来への投資拠点へと転換する提案をしました。
「この1畳を、個人情報を守り抜くための専用サーバールームへ」
Cat7A規格の高速・高セキュリティ配線、UPS(無停電電源装置)、専用空調までを完備する。
大学病院レベルの設備を、小児科クリニックに実装する。
それは、将来の莫大な改修コストを考えれば、初期段階で導入することが最も合理的な一手でした。

机下の電子カルテPC → クリーンで施錠されたサーバー室
1|将来を見据えた設備設計
このクリニックは新築移転のタイミングでしたが、
「建物が新しい=未来対応」ではありません。
あとから変えられない部分──
それが、床下や壁の中、天井裏の配線や設備です。
そこで、ノイズに強く、10ギガビット通信に対応するCat7A規格の配線を採用しました。「そこまで必要ない」と言われるほどのグレードを、あえて選んでいます。こどもクリニックで、このレベルのインフラを導入しているのは非常に珍しく、先進的といえます。
将来、医療映像や検査データの通信量が今とは桁違いに増えても、慌てず使い続けられるように。
“今は過剰”が“未来ではちょうどいい”、そういう判断でした。

・ Cat7Aなら、病院で使う高精細な映像や検査画像もサッと送れるレベル。
・ 映画1本分のデータでも、数秒ほどで送れるイメージ。
・ 写真1枚くらいのデータなら、体感ほぼ一瞬。
・ 身近なたとえなら、Blu-rayディスク1枚分(映画1本分)も“すぐに”コピーできる感覚です。
2|診察室とサーバーの関係再設計
サーバーは例の1畳スペースへ。
診察室には最低限のPCを残し、本体やデータのやりとりはすべてサーバー室に集約。
・PCをたくさん並べない
・配線を見せない
・機材の掃除・保守がしやすい
・でもしっかり“裏でつながっている”
見た目はシンプル、でも中身はしっかり。
“現場と未来”のバランスを、構造からデザインしています。

3|未来を設計し、信頼と伴走へ
PMから、事務長へ。
当初の役割は、移転プロジェクトのPM。
進行に伴い、スコープは経営中枢まで拡張した。院長とスタッフが医療に集中できるよう、建築・設計の管理から現場の課題対応までを一気通貫で担っていたが、移転時に事務長が離職した事で、私たちは事務長代行を受任。次の事務長が決まるまでの3年間継続し、クリニック経営の実務ノウハウを獲得する事ができた。

それは私たちが踏み込んだのではなく、「自分たちが分からない、未来に必要なことを全部やってくれる」という、クライアントからの深い信頼が、私たちの役割を拡張させてくれたのです。
完成したのは、クリニックの新しい“当たり前”
このプロジェクトで生まれたのは、単なる新しい建物ではありません。未来の地域医療を支える、新しい「当たり前」の基準です。

クリニックにサーバー室設置
物理的・デジタル的両面で、個人情報を最高レベルで保護します。

AI時代に対応する拡張性
将来、どんな高度な医療AIが登場しても、追加工事なしで即座に導入可能です。

小規模医療機関のモデルケース
未来を標準装備するという、新しいクリニックのあり方を構築しました。
基盤を創り、未来に伴走する。
さぁ、一緒に未来をデザインしましょう!
これは、単なるDX化の事例ではありません。
未来を見据え、クライアントがまだ気づいていない課題にすら先手を打つ。
それこそが、私たちの根底にある「併走思考」です。