海外代理店業務Webシステムの再設計・実装
開発が遅延し、仕様と実装が噛み合わなくなっていた海外代理店向けの業務Webシステム。SophiaRealは顧客側のCTO機能を担う立場で現場から要件を定義し直し、仕様策定、開発、AI・RAGの実装、稼働後の運用安定までを一つの流れとして立て直しました。
開発を引き継ぐ前に、なぜ仕様が決められなくなったのかを解く。
地方に本社を置く老舗の工業製品メーカー。国内市場が成熟するなかで海外売上の比率を高め、為替に左右されにくい収益をつくることが経営課題になっていました。その中核として進めていたのが、各国・地域の代理店をつなぐ業務Webシステムです。製品情報の提供から問い合わせ、見積、受発注、進捗確認までをまとめ、海外の販売網を支える基盤にする構想でした。 一方で、開発が進むほど要件の追加と変更が重なり、仕様と実装の整合が取りにくくなっていきます。プロジェクトを主導していた担当者の離任も重なり、なぜその仕様になったのかという経緯もたどれない状態に。開発投資はすでに進んでいるものの、何を残し、何を決め直すのかを判断する役割が、社内にも開発体制にも不在でした。
仕様が足りなかったのではない。仕様を決める機能が足りなくなっていた。
既存の仕様書を整理し直すだけでは、このプロジェクトは動き出しませんでした。 現場には、仕様書に書かれていない判断と例外があります。海外営業、受発注、代理店対応は、それぞれ異なる前提で動いており、「どんな機能が欲しいか」を聞いて回っても、一つのシステムとして成立する要件にはなりません。 そこでSophiaRealは、開発会社として仕様を待つのではなく、顧客側に入りました。経営と現場へのヒアリングを重ね、いまの業務、海外展開で必要になる運用、すでに作られている機能を突き合わせる。そのうえで「当初の仕様を完成させること」自体をゴールから外し、何を作るべきかをこちらから逆提案しています。

仕様書の不足を埋めても、意思決定の空白は埋まらない。
依頼された機能を順番に足しても、業務の全体を誰も設計していなければ、画面と機能が増えるだけです。必要だったのは、仕様書を完成させることより先に、事業・業務・技術を横断して何を決めるべきかを整理する役割でした。
顧客側に立って何を作るべきかを決め、そのまま実装までつなぐ。
現場の要望をそのまま仕様へ変換せず、その背景にある業務と目的まで理解したうえで要件を組み直します。残すもの、直すもの、作り直すものを判断して開発可能な仕様へ落とし、その判断軸を、仕様策定から実装まで一貫させました。
聞く、決め直す、作る、使う。止まったプロジェクトを順に再起動する。
既存仕様の修正からではなく、現場の業務を理解し直すところから始めました。そこから既存投資を選別し、新しい業務構造と開発仕様をつくり、AI・RAGを含めて実装。実際の代理店・本部業務で安定して使えるところまで伴走しています。

顧客が言葉にできない要件まで、現場から組み立て直す。
数週間かけて、経営、営業、海外事業、受発注、代理店対応と、実際に業務を担う関係者へヒアリングを重ねました。聞いたのは「どんな画面が欲しいか」ではありません。代理店から何が届くのか。誰が確認するのか。どこで判断が必要になるのか。何をExcelで管理しているのか。どんな例外が起きるのか。海外とのやり取りで、どこが止まりやすいのか。現場の仕事を一つずつ分解し、担当者自身もシステム要件としては言語化できていなかった判断と情報を拾い上げます。そのうえでSophiaReal側から業務モデルを組み立て、「この会社が海外販売を伸ばすなら、システムはこうあるべきではないか」と逆提案しました。要望を集めて仕様書にするのではなく、要望そのものを顧客側に立ってつくるところから始めています。

すでに使った予算を、すべて捨てずに立て直す。
既存の仕様書、画面、データ構造、開発済み機能を一つずつ確認し、ゼロから作り直すという判断は取りませんでした。既存資産を、KEEP — そのまま活かすもの、REFORM — 修正して活かすもの、REBUILD — 構造から作り直すもの、に分けます。認証や共通機能など、この先も使える部分は残す。一方で、業務と合わなくなったフローや、変更を重ねて構造が複雑になった部分は設計からやり直す。すでに行った投資を守ることと、将来の改修コストを増やさないこと。その両方を見ながら、システムの骨格を整理しました。

海外代理店との仕事を、一つの業務Webシステムに組み直す。
定義し直した要件を、業務要件、画面、権限、データ、外部連携まで具体化し、開発仕様へ落としました。対象にしたのは、単なる受注画面ではありません。製品・仕様情報、国や地域ごとの代理店情報、問い合わせ、見積、注文・受注、進捗確認、関連資料まで、代理店と本部のあいだで発生する仕事を一つの業務基盤として扱います。同じデータを使いながら、代理店には自分たちの注文と必要な製品情報を、本部担当には処理すべき案件を、管理側には全体の進行状況を見せる。巨大な管理画面を全員に渡すのではなく、役割ごとに「次に何をするべきか」が分かる業務画面として設計・実装しました。

AIとRAGを、海外事業を支える知識レイヤーとして組み込む。
老舗メーカーには、長年蓄積された製品知識があります。製品仕様書、マニュアル、技術資料、FAQ、過去の問い合わせ。その多くは日本側の担当者とファイルの中にあり、海外代理店が必要なときにすぐ引き出せる状態ではありませんでした。そこで業務WebシステムにAIとRAGを組み込み、関連する製品情報や技術資料、過去事例を横断して探せる環境を用意します。代理店や本部担当者が質問すると、AIが関連情報を検索し、回答案と参照元の資料を提示する。価格、契約、特殊仕様など責任の伴う判断は人に戻し、確認できる情報の検索と、文書作成の支援から使いはじめました。公開して終わりにはせず、実際の利用で見つかった例外処理、分かりにくい画面、検索に出てこない資料を調整しながら、業務として安定して使える状態まで伴走しています。
この事例で組んだ専門性とフェーズ
開発だけを担当した案件ではありません。事業背景と既存プロジェクトの整理から入り、業務・要件・仕様の再定義、UX・システム設計、開発、AI/RAG実装、検証、運用の安定化までを横断しています。
既存プロジェクトの診断、現場ヒアリング、業務・要件の再定義、既存開発資産の評価、仕様書・開発仕様の策定、海外代理店向け業務WebシステムのUX・システム設計、実装、AI・RAGによる知識検索と文書作成の支援、検証、稼働後の改善まで。顧客側のCTO機能を担う立場で一貫して支援した範囲です。
止まっていた開発が、海外事業を動かす業務基盤になる。
引き継いだのはコードだけではありません。失われていた意思決定を顧客側へ戻し、事業、現場、技術を一つの仕様につなぎ直しました。仕様策定と開発を分けずに実利用まで持っていくことで、海外展開を支える業務基盤として再起動しています。

仕様が固まる前から、実装へ。
構想、要望、既存資料の段階から相談できます。何を決めれば作り始められるかを整理し、実利用までつなげます。
