エンジン部品の技術を、ロボットの関節へ。
EV化を見据えた、既存技術からの新規事業開発。自動車部品で培ってきたアルミダイカストと精密加工の技術を、新しい市場へ。保有する設備と製造ノウハウを見つめ直し、協働ロボット向けの関節ハウジングという新しい製品事業へつなげた新規事業開発です。
主力部品がなくなる前に、次の仕事をつくる。
自動車向けのアルミ部品を長年手がけてきた、中堅部品メーカーとの新規事業開発です。
同社の主力は、エンジン周辺で使われるアルミダイカスト製のハウジング部品。複雑な形状を鋳造し、組付けに必要な部分を精密に加工し、安定した品質で量産することを強みにしてきました。
しかし、自動車市場ではEV化が進み、内燃機関に使われる部品は中長期的に減っていきます。
ハイブリッド車向けを中心に、すぐに仕事がなくなるわけではない。一方で、その先も今と同じ製品だけで事業を支え続けられるとは限りません。
経営陣が考えていたのは、まったく違う分野へ飛び込むことでも、新しい設備を大量に導入することでもありませんでした。
いま工場にある設備と、これまで磨いてきた技術を使って、次に何をつくる会社になるのか。
その問いから、次の事業を探すプロジェクトが始まりました。
「エンジン部品」を外してみると、別の強みが見えてきた。
最初に行ったのは、新しい製品のアイデアを並べることではありませんでした。
同社が何をつくっているかではなく、それをどうやってつくっているのかを見直しました。
アルミを薄く、複雑な形状に成形する。鋳造した部品の必要な部分だけを高精度に加工する。軸や部品が組み付く位置を安定して仕上げる。そして、それを一品ではなく、同じ品質で繰り返し量産する。
製品名を外して整理していくと、強みは「エンジン部品をつくれること」ではありませんでした。
軽く、複雑で、精度が必要なアルミ部品を、量産できる形に仕立てること。
そこで、「今の設備で何がつくれるか」ではなく、この能力を必要としている製品は何かという見方に切り替えました。そのなかで見えてきたのが、協働ロボットの関節部分に使われるアルミハウジングでした。

製品名のままでは、技術の転用先が見えない。
「エンジン部品」ではなく、薄肉で複雑なアルミ形状を量産し、必要箇所を精密加工できる能力として捉え直しました。
市場ではなく、次につくる部品まで決める。
既存設備を使えるだけでなく、顧客課題と技術の強みが重なる具体的な製品まで絞り込みました。
既存技術を、新しい顧客に届く製品事業へ。
製品名を外して製造能力を捉え直し、協働ロボットの関節ハウジングという具体的な製品に絞り、試作・顧客評価・受注までをつないでいきました。

「何をつくってきたか」ではなく、「何ができるか」を見直す。
最初に整理したのは、設備の台数や加工方法だけではありませんでした。
既存製品の図面や製造工程を見ながら、ダイカスト、切削加工、治具、検査といった一つひとつの技術が、製品のどんな難しさを解決しているのかを見ていきました。
そこで見えてきたのが、薄肉で複雑なアルミ形状をつくり、軸や部品が組み付く箇所だけを高精度に加工し、その状態を量産でも維持する能力です。
同じアルミ部品でも、単純な切削品や板金部品では、この強みは十分に活きません。
複雑な形状が必要で、軽さが求められ、さらに一部に高い加工精度が必要な部品。
そうした製品であれば、これまで蓄積してきた設備とノウハウを、そのまま別の市場で価値にできる。ここから、新しい事業を探す基準を定めました。

市場ではなく、「次につくる部品」まで決める。
候補となる製品を見ていくなかで、注目したのが協働ロボットでした。
ロボットの関節部分には、モーターや減速機、ベアリングなどを収めるハウジングがあります。アームを軽くするためには部品自体を軽量にしたい。一方で、内部の機構を正確に保持するためには剛性と加工精度も必要になる。この条件が、同社のアルミダイカストと精密加工の強みと重なりました。
さらに顧客側を見ていくと、開発段階ではアルミの削り出しでハウジングをつくれても、数量が増えたときには、そのままの作り方ではコストが合いにくくなります。
そこでダイカスト化を考えても、削り出し用の形状をそのまま鋳造できるわけではありません。肉厚、抜き勾配、鋳物のまま使う箇所と後加工する箇所、組付け精度を量産でどう安定させるか。ここに、同社が自動車部品で培ってきた経験を活かせる余地がありました。
そこで新規事業のテーマを、協働ロボット向けのアルミダイカスト製・関節/アクチュエータハウジングへと具体化しました。
「ロボット市場に参入する」という大きな話ではなく、どの顧客に、どの部品で入るのかまで決める。そこまで絞ることで、新規事業が初めて具体的な営業と開発の対象になりました。

「つくれます」ではなく、量産できるところまで引き受ける。
事業テーマが決まった後は、技術紹介の資料をつくって終わりにはしませんでした。
想定したのは、協働ロボットやロボット用アクチュエータを開発するメーカーです。そこで、新しい事業の価値を、単に「アルミダイカストができます」とは置きませんでした。
開発段階で削り出しによってつくられたハウジングをもとに、量産を前提とした形状へ設計を見直す。肉厚や形状、鋳造後に加工する箇所、組付け基準面、検査方法までを整理し、ダイカスト、精密加工、検査までを一つにつなげる。
完成した図面を受け取って加工するのではなく、削り出し部品を量産可能なダイカスト部品へ変えるところから入る。
それを、新しい事業の提供価値にしました。
さらに、最初にどの部品で試作するか、顧客に何を確認するか、どの条件が成立すれば次へ進めるのかを整理。実際の部品を題材に試作と顧客評価を進め、形状や加工条件を調整しながら、採用に向けた検討へつなげていきました。
事業テーマを考えるだけではなく、顧客と製品を前にして、次の受注をつくれる状態まで進める。そこまでを、この新規事業開発の範囲としました。
この事例で組んだ専門性とフェーズ
案件内容に合わせ、主に担った領域を色付きで示しています。薄いセルは、この事例では主対象としていない範囲です。
既存技術を事業資産として捉え直し、転用先となる具体製品の選定、提供価値の設計、試作・顧客評価までを一つの新規事業開発としてつないだ範囲です。
「次の事業を探す」から、実際に売る製品ができた。
プロジェクトの始まりにあったのは、EV化によって主力部品の需要が減っていくなか、今ある設備と技術を活かして次の事業をつくりたいという経営課題でした。
そこから、エンジン部品という製品名を一度外し、自社が本当に得意としている製造能力を見直しました。
複雑なアルミ形状をつくる。必要な部分を精密に加工する。それを、量産でも安定した品質で繰り返す。
その強みと、新しい市場の製品課題を重ねることで、協働ロボット向けのアルミダイカスト製・関節/アクチュエータハウジングという具体的な新規事業へつなげました。
さらに、削り出し部品を量産用ダイカストへ置き換えるという提供価値を定め、対象顧客、試作する部品、量産時に確認すべき条件までを整理しました。
顧客への提案から、実際の部品を使った試作評価へ。形状や加工条件を詰めながら採用検討が進み、具体的な案件での受注につながりました。
「自動車以外にも何かできないか」という探索から、新しい製品をつくり、顧客に提案し、実際に受注できる事業へ。エンジンのために磨いてきた技術を、ロボットを動かす部品へ。既存事業で積み上げてきた設備と技術を捨てるのではなく、その価値を捉え直すことで、次の市場で使われる新しい事業へ変えていきました。

いまある技術から、次の事業を。
市場や製品がまだ決まっていない段階から相談できます。保有技術・設備・顧客課題を整理し、次に何をつくり、何を確かめるかから具体化します。
