画面の「似合うかも」を、店頭の試着へ。
ECでの迷いを接客へ引き継ぐ、試着起点の購買体験再設計。自分の写真で着用イメージを確かめ、気になる商品やコーディネートを比べる。その選択を消さずに、店舗在庫の確認、試着予約、店頭での接客までつないだ購買体験の再設計です。
商品はつながっていても、買い物の体験はつながっていなかった。
直営店とECを展開する、レディースアパレル企業との購買体験再設計です。
同社では、ECの商品情報やスタイリングコンテンツを充実させ、店舗でもスタッフによる接客に力を入れていました。
ECでは商品を探せる。店舗では実際の商品を手に取り、試着できる。それぞれの接点は整っていました。
それでも顧客から見ると、オンラインと店舗は別々の買い物でした。
ECで気になるジャケットを見つけても、自分が着たときにどう見えるのかまでは分からない。色違いや別のボトムスと比較しても、その場で決めきれず、店舗で試してみようと思う。
ところが、欲しい色やサイズがどの店舗にあるのかを改めて調べ、店舗へ行けば、今度は「今日は何をお探しですか」から接客が始まります。
ECで何を見て、何と迷い、どこまで候補を絞ったのか。その時間は、店舗へ移った瞬間に消えていました。
商品はECにも店舗にもある。それなのに、「選ぶ」と「試す」の間で顧客の判断だけが引き継がれていない。
そこで、ECを便利にすることでも、店舗をデジタル化することでもなく、顧客が服を選んでいる途中の状態を、そのまま次の接点へ運ぶことから考え直しました。
「オンラインで買わせる」のではなく、「試してみたい」まで運ぶ。
アパレルのオンライン体験では、できるだけEC上で購入まで完結させることが一つの考え方です。
ただ、このブランドが扱う商品では、それだけを追いかけるべきではないと考えました。
同じジャケットでも、丈や肩まわりで印象は変わります。パンツはシルエットによって、合わせたいトップスも変わる。写真を見て「好き」と思えても、自分が着たときのバランスや、生地の落ち方、実際の着心地までは画面だけでは分かりません。
そこで、デジタルですべてを判断させるのではなく、役割を分けました。
自分の写真を使って、気になる商品の着用イメージを見る。色を変える。パンツやスカートを合わせる。いくつかのコーディネートを比べ、気になったものを保存する。
「これなら買える」と決めてもらうのではなく、「これは実際に着て確かめたい」と思えるところまでをオンラインでつくる。
そこから店舗在庫を確認し、試したい商品を選んで予約する。店頭では、その続きを実物で確かめる。
オンラインと店舗のどちらかへ寄せるのではなく、それぞれが得意な判断を担当する購買体験へ組み替えました。

Visualize / Compare / Coordinate
自分が着たときの印象を見ながら、商品、色、コーディネートを比較する。
Save / Stock / Fitting
気になった候補を保存し、店舗在庫を確認して、試したい商品をそのまま予約する。
Preparation / Styling / Service
オンラインでの検討内容を店舗へ引き継ぎ、商品準備と接客のスタート地点にする。
選ぶ途中の状態を、店舗まで運ぶ。
画面の機能だけを増やすのではなく、顧客が迷いながら候補をつくる時間と、店舗側の準備・接客までを一つの体験として設計しました。

「迷わない画面」ではなく、迷いながら選べる体験をつくる。
最初に見直したのは、ECの商品一覧やボタンの配置ではありませんでした。
顧客が服を選ぶとき、何を見て、どこで迷い、何を確かめながら候補を絞っているのか。その一連の行動から整理しました。
商品写真を見る。別の色を見る。スタッフのスタイリングを見る。似た商品と比べる。手持ちの服と合わせられるかを考える。そして最後に、「自分が着たら、どう見えるだろう」というところで判断が止まる。
この迷いを、単なる情報不足とは捉えませんでした。
服を選ぶときには、複数の商品を行き来し、組み合わせを考えながら、自分なりの候補をつくっていく時間があります。それは取り除くべき摩擦ではなく、買い物そのものの一部でもあります。
だから、選択肢を減らして早く決めさせるのではなく、迷っている状態を保持したまま、比較しやすくする。
商品、色、コーディネート、着用イメージを行き来しながら候補を残せるようにし、次の判断へ進める体験を組み立てました。

サイズ適合の保証には、あえて踏み込まないと決めた。
このプロジェクトで重要だったのは、着用イメージ機能を「どこまで賢くするか」ではなく、何のために使うのかを先に決めることでした。
自分の写真にジャケットを合わせる。色違いを見る。パンツやスカートを変える。複数のコーディネートを比較する。
技術を使えば、より精密な見え方や、サイズに関する判断まで求めたくなります。
しかし、画面上で似合って見えることと、実際のサイズが合うことは同じではありません。生地の厚さや伸縮性、肩や腰まわりの感覚、着たときの動きや落ち方まで、画像だけで判断できるわけではないからです。
そこで着用イメージの役割を、比較と発見に限定しました。
完璧な着用結果を見せることそのものを目的にするのではなく、複数の商品や組み合わせを次々に試しながら、「この色も見てみたい」「この組み合わせなら実際に着てみたい」と思えることを優先する。
デジタルで想像を広げ、実物で最終判断する。
この線引きを先に決めたことで、着用イメージに必要な表現、画面上の導線、店舗へ渡す情報まで、一貫して設計できるようになりました。

試着予約を、「店舗へ送るボタン」で終わらせない。
気になる商品が決まった後は、保存した候補から店舗在庫を確認し、色やサイズを指定して試着予約へ進めるようにしました。
しかし、顧客が予約できるだけでは、オンラインと店舗がつながったことにはなりません。店舗側には、新しい仕事が発生するからです。
予約を確認する。対象商品を探す。来店まで確保する。接客時に商品を出す。
この仕組みを単なる「ECから店舗への取り置き依頼」にしてしまえば、店舗スタッフにとっては業務が増えるだけです。
そこで、店舗へ渡す情報そのものを見直しました。
予約した一着だけではなく、顧客が比較していた色違いや、保存していたコーディネートも接客時に確認できる状態にする。
スタッフは、顧客が来店してから初めて要望を聞くのではなく、「このジャケットを見ていた」「こちらの色とも迷っていた」「このパンツとの組み合わせを保存していた」というところまで理解した状態で商品を準備できます。
予約情報を、取り置きの指示ではなく、接客の準備に使える情報へ変える。
これによって店頭でも、「本日は何をお探しですか」からではなく、「こちらを試してみますか」「比較されていた色もご用意しています」という、その顧客の続きから接客を始められるようにしました。
スマートフォンの画面だけを完成させるのではなく、在庫情報、予約、商品の準備、スタッフが見る情報、接客までをひと続きにする。そこまで設計して、初めて「選ぶ→試す」が一つのサービス体験になると考えました。
この事例で組んだ専門性とフェーズ
案件内容に合わせ、主に担った領域を色付きで示しています。薄いセルは、この事例では主対象としていない範囲です。
画面だけではなく、ECでの発見から店舗での試着・接客までを一つの顧客体験として成立させる案件。EXPERIENCEを軸に、着用イメージ生成や在庫・予約連携をTECHNOLOGY、商品やコーディネートの見せ方と着用表現をCREATIVEの範囲として扱いました。
ECで迷った時間が、店頭接客の準備になった。
プロジェクトの始まりにあったのは、ECと店舗の両方を持ちながら、その間で顧客の選択が途切れてしまうという課題でした。
そこで、オンラインで購入を完結させることをゴールにせず、「気になる」「比べたい」「試してみたい」という顧客の判断を、一つずつ次の接点へつないでいきました。
自分の写真で着用イメージを確かめる。色やコーディネートを比較する。気になる候補を保存する。店舗在庫を確認し、試したい商品を指定して予約する。
店舗では、その選択をスタッフが事前に確認し、商品を準備して来店を迎える。そして顧客は、ECで選んでいた商品の続きを、実物を前にしてスタッフと一緒に確かめる。
ECで過ごした時間が消えず、そのまま店頭接客の材料になる。
顧客にとっては、一度考えたことを最初からやり直さなくていい。店舗にとっては、顧客が何を求めているのかを知ったところから接客を始められる。
着用イメージも、店舗在庫も、試着予約も、それぞれを単独の便利機能として追加したのではありません。
「選ぶ」と「試す」の間にあった切れ目をなくすために、一つの購買体験としてつなぎ直しました。
画面で生まれた「似合うかも」を、実際に着て確かめられるところまで。ECと店舗が、それぞれ別の売り場ではなく、同じ買い物の続きを担う状態をつくりました。

画面と現場を、ひとつの体験として。
UIだけ、店舗だけに切り分けず、顧客の判断と現場の運用を一緒に見ながら、サービス体験を具体化します。
