次世代車載HMIの構想を、乗り込んで体験できる一台へ
デザインや企画として描かれていた次世代車載HMIを、ディスプレイ、操作デバイス、ソフトウェア、制御、通信、車室モックまで横断して一台の実機にまとめました。まだ量産仕様にはなっていない構想を、社内のレビューや完成車メーカーへの提案の場で、そのまま体験として共有できるデモンストレーターへ具現化しています。
まだ仕様になっていない構想を、動く実機までつなぎ切る。
大手自動車部品メーカーの先行企画・デザイン部門では、数年先の車室体験を見据えたHMI構想が進んでいました。大型ディスプレイ、新しい操作方法、車両状態と連動するUI。目指す世界観は、言葉とデザインとして共有されていました。 一方で、それを実際に動かそうとすると、ディスプレイ、電装、ソフトウェア、制御、筐体といった複数の専門領域を同時に扱うことになります。各領域を担う組織はそれぞれ量産に向けて最適化されているため、まだ仕様の定まらない先行構想を一つの体験として束ねる役割は、社内には置きにくい状態でした。 さらにこの構想を前へ進めるには、社内で合意を得て、その先の完成車メーカーへ提案するという道筋があります。資料と静止画だけでは、その場で伝えられることに限りがありました。 そこでSophiaRealが、構想と既存技術の間を埋める外部のR&Dチームとして入りました。
足りないのは技術ではなく、技術を一つの体験に束ねる役割。
自動車開発の現場には、領域ごとに高い専門性が蓄積されています。 一方で先行企画は、完成した仕様を各領域へ渡せる段階から始まるわけではありません。「こういう車室にしたい」「この操作を成立させたい」という構想の側から、ディスプレイ、入力デバイス、ソフトウェア、通信、制御、筐体を同時に考えていくことになります。 量産を担う領域には、品質、安全、既存アーキテクチャといった前提があります。先行企画は、その前提そのものを探っている段階です。 必要だったのは、どちらか一方の理屈ではなく、その間に立ち、構想を技術へ翻訳しながら実物としてつなぐ機能でした。

上流の構想と、各専門領域の間に「実装の空白」が残っていた。
UIだけを作っても車室体験にはなりません。ハードウェアだけを用意しても、企画した体験は伝わりません。構想を実機へ変えるには、何を実物で再現し、何をソフトウェアで模擬し、どの既存技術を使い、どこだけを新しくつくるのかまで、一つのシステムとして組み立てる必要がありました。
仕様の完成を待たない。構想から必要な技術を選び、つなぎ、足りない部分をつくる。
最初から量産仕様へ落とすことは目的にしていません。今回伝えたい体験から逆算して、必要なディスプレイ、操作デバイス、コンピューター、通信方式、制御、車室モックを選定します。既存技術で成立する部分は積極的に使い、存在しない部分だけを専用に実装する。構想を起点に、複数の技術を一本の動作へつなぐことを設計原則にしました。
描く、つなぐ、動かす。構想を一台のデモンストレーターへ。
完成した仕様書を受け取って制作した案件ではありません。企画資料とデザインから体験の流れを組み立て、必要な技術を選定し、UI、ハードウェア、ソフトウェア、制御、筐体を並行して開発しました。領域をまたぐ構成はSophiaReal側でまとめ、実際に人が乗り込み、操作できる一台へ統合しています。

構想を、時間軸のある体験シナリオへ落とす。
最初に、デザイン画をそのまま画面へ起こすことはしませんでした。乗車したときに何が表示されるのか。走り出すと何が変わるのか。どの操作をステアリングで行い、どこをタッチで扱うのか。車両状態の変化をどう見せるのか。企画側が描いていた世界観を、時間軸を持った一連の流れへ整理します。その過程で、まだ具体化されていなかった操作、画面遷移、システムの反応も補い、デザインと技術の間に残っていた空白を、実装できる体験シナリオへ変えていきました。

領域をまたぐ技術を、一台の実機へつなぐ。
次に、体験を成立させるための技術構成を組みました。複数のディスプレイ、ステアリングスイッチやタッチ操作などの入力デバイス、UIを動かすソフトウェア、機器間通信、車両状態を模擬する制御、アンビエントライト、車室モック。通常であれば複数の専門部門へ分かれる領域を、一つの実機として統合します。例えば車速、シフト、充電状態、ナビゲーション、警告などの信号を模擬し、操作や車両状態に合わせて複数の画面や機器が連動する環境を構築しました。画面だけが動くデモではなく、車室全体が一つのシステムとして反応する状態までつなぎました。

あるものは使う。ない部分だけをつくる。
先行開発の実機に、すべて量産相当の部品を使う必要はありません。市販ディスプレイ、評価用ボード、既存の入力デバイス、汎用コンピューター、既存ソフトウェア、3D造形など、利用できる技術を組み合わせます。一方で、今回の体験に必要でありながら既存品では成立しないインターフェース、制御、UI、筐体部品は個別に設計・実装しました。重要なのは、新しい技術を一から発明することではなく、すでにある技術を目的に合わせて組み合わせ、構想を成立させることです。必要な部分に開発を集中させることで、先行企画のスピードに合わせた実機化を進めました。

社内レビューから顧客提案まで、実機を育てる。
完成した実機は、一度見せて終わる展示物にはしていません。まず企画・デザイン部門が自ら操作し、表現や動作を調整する。そのうえで、社内の意思決定層が実際の車室に近い状態で次世代HMIを体験できる形へ仕上げます。レビューで挙がった意見を反映しながらソフトウェアとシナリオを更新し、その先の完成車メーカーへの先行提案や技術展示でも使える状態にしました。企画資料の中にあった構想を、社内へ伝え、その先の顧客へ持っていけるR&D資産へ変えています。
この事例で組んだ専門性とフェーズ
HMIデザインだけでも、ハードウェア試作だけでもありません。先行構想の整理、UX・UI設計、技術構成、ソフトウェア、デバイス、通信・制御、筐体・車室モック、統合、実機調整までを横断しました。
次世代車載HMIの構想整理、体験シナリオ、UX・UI、ディスプレイ構成、操作デバイス、ソフトウェア、機器間通信、車両信号の模擬制御、アンビエント表現、筐体・車室モック、システム統合、実機調整、社内レビュー後のアップデート、完成車メーカーへの提案・展示へ向けたデモンストレーターの仕上げまでを横断した範囲です。
構想が、社内を越えて伝わる一台になる。
企画やデザインとして共有されていた次世代HMIの構想を、UI、ソフトウェア、ハードウェア、制御までつながった実機へまとめました。上流部門が描いた未来を社内の役員層へ伝え、その先の完成車メーカーへの先行提案にも持ち出せるR&D資産として仕上げています。

まだ仕様になっていない構想からでも、実機化できます。
先行企画、デザイン、研究テーマなど、実現したい方向はあるものの、技術構成や仕様まで決まっていない段階から対応します。UI、ソフトウェア、デバイス、通信、制御、筐体まで必要な技術を横断し、社内で共有でき、顧客提案まで持っていける実機デモとして具現化します。
